硬直して後ずさり、スタッフの方に促されて部屋の中に入りました。強い香水の匂いがしました。
ドアを支えながら立っているマイケルは背が高くて、私は少し見上げながら自分の名前を言って、右手を差し出しました。マイケルは微笑みながら握り返してくれました。
奥のソファに通されて、「どうぞ座ってください」とマイケルが言いました。
まごまご立ち尽くしていると、もう一度「Please」と言われてしまいました。
やっと座ると「何を飲みますか?」と聞かれました。
面食らって、つい日本語で「なんでも結構です」というと、ミネラルウォーターを注いでくれました。
作品を見せてと言われ、ファイル、ポスター、フィギュアを一つずつ手渡しました。
マイケルは、一つ一つ丁寧に見ながら「Oh good..」とか「I like it」とか、ささやくような甘い声で褒めてくれたり、面白がって「Haha!」と笑ったりしました。
ビリージーンを踊るアニメを見せたくて、DVDを持っていったのですが、テレビのリモコンが見つからないと言うので、ipodに入れたものを見てもらうことになりました。マイケルはアニメのダンスを見ながら「Oh! Yeah! Yeah!」と細長い足をパタパタさせて、口を押さえて喜んでいました。
私はそれまで、自分の作品をただ自画自賛して、マイケルに見てもらえたら笑って喜んでもらえるに違いないなんて、独りよがりな妄想をしていただけのつもりでしたが、テーブルを挟んで向こう側の椅子に座っているマイケル・ジャクソンは、妄想通りのことをしていました。
信じられないことに、私がしたことが、マイケル・ジャクソンを笑顔にしていました。
「どうやって描くの?」「どのくらいのサイズで描くの?」「canoってどういう意味?」と質問されました。
「どこで生まれたの?」と聞かれたので「九州の福岡です。知っていますか?」と答えると、「あ~福岡知ってるよ!僕は日本中をツアーしたからね。あはは!」と言いました。
返す言葉が見つからず、夢のような気持ちでうっとり見とれてしまっていたら、「どうしたの?」っていう感じで、マイケルはまたハハっと笑いました。